基本情報

水系荒川水系
種別一級河川
延長35km
流域面積117k㎡

昔よりキレイな姿で、緑豊かな田園地帯を流れる川。

芝川は、埼玉県桶川市北1丁目地内を水源とし、桶川市、上尾市、さいたま市、川口市を通る一級河川。途中で竪川(たてかわ)と合流し、「旧芝川」と「新芝川(本流)」に分かれたのち、2本とも荒川に合流します。

さいたま市内では、芝川流域に「見沼田んぼ」と呼ばれる田園地帯が広がり、都心から比較的近いながら豊かな自然を望むことができます。

以前はかなり汚い川と言われていた芝川ですが……地元団体や自治体による清掃活動や川幅整備、浄化水路整備などが盛んにおこなわれ、そうした取組により、今ではずいぶんと改善されました。埼玉県でも特に力を入れ、その活動の成果が見えてきているところです。

そんな芝川の歴史や、切っても切り離せない見沼田んぼとの関連性、そして暮らしとの関わりについてご紹介していきます!

田んぼと歩んだ歴史、人を助ける遊水機能。

見沼田んぼ(提供:さいたま市

江戸時代、関東で頻繁に起こっていた洪水被害を軽減するため、利根川は東へ、荒川は西へとその流路を振り分けられました(参考:川図鑑【利根川】)。

その後、農業用水を確保するために川の水をせき止めることで「見沼溜井(みぬまためい)」というため池がつくられたのですが……、かの「暴れん坊将軍」徳川吉宗による享保の改革のため、新田開発が進められ、見沼溜井エリアは新たに「見沼田んぼ」として切り拓かれました。

この田んぼへ水を運ぶためにつくられたのが「見沼代用水(みぬまだいようすい)」。利根川に利根大堰をつくり、東西に枝分かれしながら荒川へと合流する流路が描かれました。

見沼代用水を通ってきた利根川の水は、農地で大活躍。田んぼで使われた排水を流す道が必要となりました。

そこで誕生したのが芝川!見沼田んぼ中央の低くなっている部分を開削し、荒川に合流するようにかたちづくられたのです。

見沼代用水と芝川のしくみ(提供さいたま市

こうして新たな生を受けた芝川・見沼代用水周辺の人口は、長い歳月を経てどんどん増加。それに伴い、以前から多かった水害はさらに切実な問題となり、抜本的な改修工事が施されるようになりました。

実は昔、見沼田んぼエリアは東京湾とつながる入江であったため、水が溜まりやすいという性質を持ちます。そこで、下流部の洪水を防ぐために遊水機能を利用した治水の役割に注目され、治水上の観点から1965年にいわゆる「見沼三原則」が制定されました。これ以降、この地域の開発を抑制し、広大な緑地として保全していくという取組が継続しています。

その後、住民の意見を踏まえて1995年に「見沼三原則」に代わる新たな土地利用の基準として「見沼田圃の保全・活用・創造の基本方針」が制定され、現在に至るまで公園や緑地などの宅地以外の方法で土地を有効活用する動きが続いています。また、河川の改修事業も積極的におこなわれ、今は第一調整池の整備が進められています。

最近増加している台風等による浸水被害。ここ見沼田んぼではその自然遊水池としての力を活かす取組や調節池の整備によって、芝川下流域の被害の拡大防止が図られています。

大雨に見舞われたとき、水をどう逃がし、どこに貯めておくか。過去の経験を踏まえ、コントロールしていく。地球温暖化が叫ばれる現在、気候変動に対し、地域ができる適応策としてさらに重要性が高まっていくのではないでしょうか。

人のいとなみと自然風景が、癒しをくれる。

国指定史跡 見沼通船堀(提供さいたま市

見沼田んぼには「見沼通船堀(みぬまつうせんぼり)」という、江戸時代につくられた全長約1kmの運河があります。

東西の見沼代用水と芝川を結び、閘門(こうもん)で高低差約3mの水位を調整することで船を通していました。これにより、見沼田んぼでとれた米などが江戸に運ばれ、江戸からは肥料や塩などが運ばれていたのです。

昭和初期にはその役目を終えましたが、見沼通船堀の仕組みを伝えるため、今も定期的に「閘門開閉実演」がおこなわれ、多くの見学客が訪れています。

見沼田んぼの桜回廊(提供さいたま市

また見沼田んぼエリアは、芝川の川辺に設けられた公園や緑地が盛りだくさん。サギやカワセミといった野鳥観察スポットにもなっています。冬には、芝川に白鳥も飛来するんですよ!

年中、四季折々の自然の姿が楽しめますが、近年注目を集めているのが桜!「散策できる日本一の桜回廊」として総延長20kmを超える桜並木がつくられ、3月下旬〜4月上旬の開花時期には多くの人々を魅了しています。

地域を潤し、住民の命を守る自然豊かな景色は、これからも私たちの心を癒してくれることでしょう。

これを読んだあなたにオススメ

【神流川】自然の美しさと人類の技術が輝く、神の川。

【びん沼川】川から沼、沼から川へ。人の手で姿を変えてきた旧荒川の流路

【藤右衛門川】住民の暮らしを守る大切な川