基本情報

水系利根川水系
種別一級河川
延長60.7km
流域面積208.9k㎡

荒川から引き離されて生まれ変わった川。

荒川の流路の付け替え前
(引用:国土交通省
荒川の流路の付け替え後

熊谷市、行田市、鴻巣市、久喜市、桶川市、蓮田市、白岡市、さいたま市を流れ、越谷市中島で中川に合流する元荒川。もともとは、その名の通り荒川の本流でした。本流ではなくなったきっかけは、江戸時代に遡ります。

江戸時代までの荒川は、もともとは最終的に利根川に合流し海へ注ぐ流路を描いていました。しかし、幾度となく氾濫と流路変更を繰り返してきた利根川や荒川は、それぞれ「暴れ川」「荒ぶる川」と呼ばれ、人々の生活を脅かす存在となっていました。

そこで、江戸幕府の命を受けた伊奈備前守忠治の手によって、利根川から分離する付け替え工事がなされたのです。そのとき、熊谷市久下で河道を締めきって堤防を設置。荒川の本流を和田吉野川に合流させ、隅田川を通って東京湾に注ぐ経路をたどるように変更しました。これを「荒川の西遷」と呼び、このときまで荒川として流れていた久下以降の流路は、「元荒川」として再出発することとなったのです。

実はこの荒川の西遷は、利根川の記事で記した「利根川の東遷」と合わせ、関東平野の暮らしを大きく変えていくための徳川幕府と伊奈一家の一大プロジェクト。今の関東の暮らしがここまで栄えているのは、こうした偉人たちのおかげと言えるかもしれません。

世界で唯一、「ムサシトミヨ」が生息。

提供:熊谷市

元荒川の現在の水源は、起点上流の排水路と起点下流に流れ込む支川。源流部付近には、埼玉県の「県の魚」や熊谷市の「市の魚」に指定されている淡水魚「ムサシトミヨ」が生息しています。

水草でオスが巣をつくって子育てをする珍しい魚で、寿命は一年ほど。冷たくきれいな川で生活します。以前は県内の他の場所や東京都西部にも生息していましたが、川の汚染などの影響を受けて、生息しているのは世界で唯一、ここ元荒川の上流部だけになってしまいました。

埼玉県は、絶滅の危機から守るため「元荒川ムサシトミヨ生息地」(地域指定)として天然記念物に指定。「熊谷市ムサシトミヨ保護センター」から下流へ約400mの区間を保護しています。

環境省や埼玉県のレッドリストでは、「絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)」に分類。「埼玉県希少野生動植物の種の保護に関する条例」で「県内希少野生動植物種」に指定し、捕獲や殺傷等を制限しています。

また、こうした希少な魚であるムサシトミヨを守るため、保護団体「熊谷市ムサシトミヨをまもる会」が密漁パトロールやゴミ拾い、草刈りなどの活動をおこなっています。

ムサシトミヨを見てみたい!という人は、熊谷市ムサシトミヨ保護センター(熊谷市久下2148-1)のほか、埼玉県環境科学国際センター(加須市上種足914)、さいたま水族館(羽生市三田ケ谷751-1)に行ってみてください。水槽で泳ぐムサシトミヨを見ることができます。

春に人々の心を癒す、桜に囲まれた川。

元荒川沿いには多くの桜スポットが存在します。元荒川に限らず川沿いに桜が植えられていることが多いのは、実は防災が理由なんだそう。

本記事の前半で出てきたように、川の決壊が多くの人々の生活を壊してしまっていた江戸時代。強い土手をつくり決壊を防ぐためにはどうしたらよいか……そう頭を悩ませた先人たちは、「川沿いに桜を植えれば見物客がたくさん来て、その土手を踏み固めてくれるはず」と考えたのです。

さて話は戻り、ここでは元荒川沿いの桜スポットを少しだけご紹介します。

1つめは、鴻巣市の吹上エリア。川沿い2.5kmに及ぶ埼玉県内有数の桜の名所で、なんと500本もの桜が植えられているのです。レトロな橋も架かっているので、SNS映えもバッチリ。

2つめは、白岡市にあるさくらロード。土手横には白岡公園が設けられています。毎年春には、木舟に揺られながら元荒川の桜を堪能できる「元荒川観桜会」を実施!川の上から桜を楽しめますよ。

そして3つめは、中川との合流地点手前の越谷市・北越谷エリア。北越谷第五公園〜大沢橋までの約2kmにわたり、およそ350本のソメイヨシノが咲きます。上流側には越谷梅林公園もあり、春は特に華やかなスポットだと言えるでしょう。

こうして複数ある元荒川沿いの桜並木は、これまで多くの人々の心を惹きつけ、癒やしつづけてきました。希少な生物が棲み、多くの人々に親しまれる元荒川。これからも今ある命と自然をしっかり守っていきたいですね。

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