基本情報

水系利根川水系
種別一級河川
延長49.0㎞
流域面積165.2㎢

ベッドタウンの中を流れる身近な川。

桶川市、蓮田市、伊奈町、上尾市、さいたま市、越谷市、川口市、草加市、八潮市を通ったあと、東京都足立区を進み葛飾区で中川に合流する、首都圏のベッドタウンに住む人々にとってなじみ深い川です。

この川の源は、桶川市の小針領家(こばりりょうけ)で、旧加納村にあたります。実はこの起点、人の手によって生まれたものなんです。一緒に川の歴史を見ていきましょう。

水害から住民を守るためにかたちを変えた過去。

荒川の流路の付け替え前(引用:国土交通省

かつて綾瀬川は、元荒川(1629年頃までの荒川)の派川でした。しかし、元荒川よりも低地であったため、下流にある今の伊奈町や蓮田市は水害に見舞われました。流路をたびたび変えることから「あやしの川」と呼ばれていたことが、今の「綾瀬川」という名につながっているとされています。

江戸時代には、綾瀬川のみならずこの利根川水系全体が周辺地域に大きな水害をもたらしており、各所で工事による流路調整がおこなわれていました。この活動の一環として、伊那備前守忠次は小針領家に全長600mに渡る堤防「備前堤」をつくり、元荒川と綾瀬川の流れを分断。この地が、綾瀬川の新たな起点となったのです。

つまり、この流域地域一帯で多くの人々が豊かに暮らせているのは、安全な生活を築くために先人たちが知恵を絞り改修を重ねてきた努力のおかげ、と言えるかもしれません。

脱・全国水質ワースト1!

実は、1980年から15年連続で「全国水質ワースト1(国直轄管理河川中)」という悲しい称号を与えられていた綾瀬川。その理由は、先ほどの流路の変遷が大きく関与しています。

元荒川から切り離されたことによって、綾瀬川の主な水源は農業用水になっていました。しかし、農閑期になると田んぼからの落とし水が減り、生活排水が主な水源に。さらに農地の宅地開発や高度経済成長期の活発な動きもあり、どんどん川の水が汚れていった、というわけです。

しかし、「近年は大幅な水質改善が見られている」という事実は、ぜひ知っておいてもらいたいところ。汚れ具合を測る基準となるBOD(生物化学的酸素要求量)は、最も数値が悪い状態にあった1971年を「100」としたとき、2019年は「2.5」まで大幅ダウン。劇的な変化を遂げ、全国でもトップの水質改善率を誇っています。もう綾瀬川は確実にキレイになってきているのです。

この水質改善の背景にあるのは、地域住民や行政の地道な活動。これからも綾瀬川をもっとキレイにしていくには、一人ひとりの川を思いやる行動が大切になっていきそうです。

水質改善の軌跡を、市民団体の活動とともに紐解いていく記事はこちら

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