川沿いや水路を歩いていると、青々と茂る植物を目にすることがあります。緑豊かな風景に、「自然がいっぱいでいいなあ」と感じるかもしれません。しかし、その中には油断ならない侵入者が潜んでいることがあります。
その名もナガエツルノゲイトウ。
南アメリカ原産の外来植物で、現在は特定外来生物に指定されている要注意種です。

このナガエツルノゲイトウの生育状況を季節ごとに観察し、駆除活動に取り組んでいるのが、川口市内を流れる荒川周辺を拠点に活動する川の国応援団「荒川夢クラブ」の皆さんです。
この記事では、ナガエツルノゲイトウの生態と荒川夢クラブさんの活動についてご紹介します。
荒川夢クラブでは、水際のナガエツルノゲイトウは、川の水が引いて一番良く観察できるため、大潮の最大干潮時を狙って観察会を実施しています。

川や田んぼを守る人々を悩ませる繁殖力の脅威
ナガエツルノゲイトウが大量発生すると、川や水路の水面をあっという間に覆い尽くしてしまいます。
そうなると、水の流れが悪くなり、排水設備に絡みつくことで排水機能にも支障が生じます。また、水面が覆われることで光が届きにくくなり、在来の植物の生育環境を奪うなど、生態系への影響も懸念されています。

荒川夢クラブが活動する地域周辺には、準絶滅危惧種であるミゾコウジュやタコノアシも生育しています。しかし、ナガエツルノゲイトウが広がれば、これら貴重な植物の生育地が失われかねません。ナガエツルノゲイトウの拡大繁茂を防ぎ、希少種を保護していくことが望まれます。
地域の自然を守るため、荒川夢クラブの皆さんは地道な監視と駆除活動を続けています。


まるで植物界の不死身キャラ
ナガエツルノゲイトウの恐ろしさは、その驚異的な生命力にあります。
普通の雑草であれば、抜き取れば駆除完了です。しかしナガエツルノゲイトウは、茎や根の小さな断片が残っただけでも再生することが知られています。
まるでゲームに登場するラスボスのように、倒したと思ったら再び現れるのです。
さらに厄介なのが、その断片が水に浮いて移動すること。刈り取った植物片が流されることで、新たな場所で根付き、分布を広げてしまいます。
そのため、「とりあえず草刈りをしたから安心」というわけにはいきません。むしろ方法を誤れば、刈り取った断片からさらに増殖してしまうこともあります。
また、釣り人や作業者の靴、機械などに植物片が付着し、知らないうちに別の場所へ運ばれてしまうこともあります。
荒川夢クラブからの協力依頼を受け、川口市では除草作業を行う際にナガエツルノゲイトウを避けながら草刈りを実施するなど、拡散防止に配慮した対応を行っています。
このように、地域が一体となって取り組むことが非常に重要なのです。

駆除は「見つけたらすぐ」が鉄則
ナガエツルノゲイトウ対策には、シンプルですが非常に重要な三つの鉄則があります。
鉄則その1 早く見つける
群落が小さいうちであれば、比較的容易に対応できます。しかし、一度広がってしまうと駆除には大変な労力が必要となります。
見分けるポイント
・葉が2枚ずつ向かい合って付く
・葉の先がややとがっている
・茎の中がストローのように空洞になっている
・白い小さな花が集まった球状の花をつける
似た植物もあるため、見つけた際は自治体や専門機関に相談すると安心です。
鉄則その2 根気よく続ける
一度抜き取っただけでは終わりません。
わずかな断片から再生するため、継続的な監視と繰り返しの駆除が必要です。
鉄則その3 広げない
これが最も重要なポイントです。 駆除した植物の断片が水に流れたり、作業機械や靴に付着したりすると、新たな発生源となってしまいます。せっかくの駆除作業が「増殖作業」にならないよう、十分な注意が必要です
駆除にも工夫が必要
小規模な群落であれば、人の手で抜き取ることができます。
一方、大規模な群落では重機を用いる場合もあります。また、状況によっては除草剤を利用したり、太陽熱を利用して植物を枯らす「陽熱処理」を行ったりすることもあります。
しかし、どの方法にも共通する大切な考え方があります。
それは、
「植物を取ること」よりも「植物を広げないこと」
です。
断片を確実に回収し、適切に処分することまで含めて、初めて駆除作業が完了します。
勝手に持ち帰りはNG!
ナガエツルノゲイトウは特定外来生物に指定されています。
「珍しい植物だから持ち帰ろう」 「自宅で育ててみよう」
そんな軽い気持ちであっても、法律に抵触する可能性があります。
また、駆除した植物も適切な方法で処分しなければなりません。知らないうちに分布拡大に加担しないよう注意が必要です。
おわりに
ナガエツルノゲイトウとの戦いに、一発逆転の特効薬はありません。
大切なのは、
「早く見つける」 「根気よく取り続ける」
「絶対に広げない」
という地道な取り組みです。
一見するとただの草に見えるナガエツルノゲイトウ。しかし、その生命力はまさに「植物界のラスボス級」といえるでしょう。
私たちの身近な川や水路、田んぼの環境を守るためには、一人ひとりが外来生物への理解を深め、「見つけたら早めに対応する」という意識を持つことが何より大切です。
荒川夢クラブの皆さんによる懸命な活動は、地域の豊かな自然を未来へつなぐ大きな力となっています。
※掲載写真は、荒川夢クラブより提供、又は、埼玉県水環境課で撮影したものです。
【参考・関連情報】
〇 荒川夢クラブHP
https://kawagu.net
〇 ナガエツルノゲイトウ駆除マニュアル(農林水産省、環境省、農業・食品産業技術総合研究機構)
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kankyo/kankyo_hozen/attach/pdf/nagae-33.pdf
〇 ナガエツルノゲイトウについて(埼玉県農林部農産物安全課)
https://www.pref.saitama.lg.jp/b0902/agriculture/nagae.html



