「川のある町 埼玉」リレー連載の第1回目は秩父郡横瀬町でした。
そして横瀬町からのバトンリレーは、前澤工業株式会社さんへと渡されました。
1937年に創業された川口市にある前澤工業株式会社は、上下水道用機器・水処理装置のスペシャリストとして、地域の水環境を支えている会社です。
暮らしの中で使われる水は、水道から供給されることで使うことが出来て、その水の行方は下水から川、そして海へと流れていきます。
そんな毎日の水の循環を安心あるものとして使い、そして排水した水を自然界へとお返しして行くまでを、どれだけ意識して毎日生活しているだろうと、あらためて考えることが出来た今回の取材でした。
前回の横瀬町からバトンが渡った経緯は、横瀬町の下水処理場を前澤工業さんが建設されていて、その運転・管理を前澤エンジニアリングサービスさんが担われているということで、この度お話を伺うことが出来ました。
「横瀬町に下水処理場を建設して、町の水の循環を整えることで地域とのご縁が出来たのですが、もっと町に貢献させていただけることがないかと考えていた時に、横瀬町でつくられている紅茶を美味しいお水でいただくという考えをお伝えしたところ、横瀬紅茶のコラボパッケージやノベルティーを、作らせていただくことになりました。また横瀬町にある地域資源を生かしたクリエイティブ制作室のTATE Lab.さんにも、コースターを作っていただくことが出来ました。」
と話す笹尾さん。
2024年8月に東京ビッグサイトで開催された「下水道展‘24東京」で、そのノベルティーと一緒に出展されている前澤工業さんのブースへも、お邪魔することが出来ました。
そして会場では、横瀬お茶マイスター石黒夢積さんにもお会いすることが出来ました。
石黒さんが洋服に付けられていたのは「秩父太織」と言って、100%秩父産の繭を使って糸作りから織りまで全て手作業で作られているもので、その繊細な感じの紅色がとても素敵でした。
「8年前に横瀬町に移住して、お茶マイスターやENgaWAサポーターとして、食に携わる仕事をして来ましたが、水のことを意識するということは無かったので、町の下水処理設備が前澤工業さんにお世話になっているということも知る機会がありませんでした。前澤工業さんとのご縁があって、水のことをあらためて意識するようにはなりましたね。」と話す石黒さん。
ちょうどお話を伺っているタイミングで、横瀬紅茶をいれにティークリエイター平野裕子さんが、石黒夢積さんを訪ねて来られました。
2024年1月に横瀬町で横瀬紅茶を美味しくいれるイベントを開催された時に、石黒さんとご縁があったという平野裕子さん。
展示会場でも美味しい横瀬紅茶をいれに来てくださって、前澤工業さんのブースで皆さんと一緒にいただくことができました。
「紅茶の美味しさは、美味しいお水でいただくこともだいじです。笹尾圭子さんのお水と横瀬紅茶の関係性に気付かれた発想は、とても素敵ですね!」と話す、ティークリエイター平野裕子さん。
横瀬紅茶の温かい紅色が実に綺麗でした。あっさりとしながらも深みのある味わいは、心からホッとするひとときでした。
美味しい横瀬紅茶をいただきながらお話を伺ったのは、前澤エンジニアリングサービスの土谷隆生さん。
横瀬町の下水処理施設を前澤工業さんが設置した後に、前澤エンジニアリングサービスさんが365日運転管理を担われています。
下水道展に伺った後日、横瀬町にある水質管理センターにもお邪魔してお話を伺いました。
訪ねたその日は台風一過でよく晴れていて、ちょうど武甲山を背景にした景観を見ることができました。
「下水処理の水は自然流下と言って、勾配を利用して配置した管路を下る自然な流れに任せた水の輸送方法を用います。そして集められた水を綺麗にするために微生物の働きを応用するんです。川の石の表面がぬるっとしていたりするのは微生物の膜が付いたもので、こうした川の水の中の汚れを微生物が食べて綺麗にしている自然界の法則を応用しながら、下水処理をしているわけなんです。」と話す土谷さん。
夏や冬の季節の温度によって微生物の数が変化するので、それを調節するのが大切だと水質管理センターの松本邦成さんと恩田佳典さんにも、現地でお話を伺うことができました。
「水の中にある汚れが微生物のエサになるわけですが、夏に元気になる微生物と冬に元気がなくなる微生物が出て来てしまうので、水の浄化を一定に保つために微生物が住む水槽に敷き詰めた小石を、処理した水で洗うことで微生物の数を調節しています。」
水質管理センターでは、自然界の法則を応用しながら着実な管理運営の元で、365日休まず稼働されています。止まることのない大切な水の循環を、お話を伺いながらあらためて感じることが出来ました。
「夏には息子とよく、横瀬川へ水遊びに出かけます。『道の駅果樹公園あしがくぼ』では川辺に降りて行くことができるので、今の季節だとトンボも飛んでいて楽しいですよ!」
「毎日使う水は地球から借りているものだから、使った水を汚さないで地球に返さないといけない。お父さんの仕事はそんな風に水を綺麗にする仕事なんだと、息子に話すことがあったりしますね。」と話す土谷さん。
暮らしの中で何気なく使っている水が、地球から借りている水だという考え方には、背筋が伸びる想いでした。確かにそんな意識で水を使うことが出来たら、環境にもやさしい気持ちで向き合えるような気がします。
横瀬町水質管理センターを訪ねた後に、「道の駅果樹公園あしがくぼ」に立ち寄りました。確かにトンボがたくさん飛んでいました!
山に囲まれた横瀬川の水の流れが、地球の鼓動のような気がしたのが不思議です。
横瀬町から次の町へと渡ったはずのバトンは、奇しくもまた横瀬町の川の景色へと還って来ました。
横瀬川は荒川へと合流して、更に東京湾へと流れて行きます。
その先は世界の海へと続き、やがて地球の水となります。
毎日の暮らしの中で使われた水は下水処理されながら、また地球へと還って行くわけですね。
そんな大きな水の営みの中で、私たちが暮らす毎日があるということ。
川のある町を訪ねながら、また温かい気持ちになることが出来ました。
次にバトンが渡る「川のある町」も、どうぞお楽しみに!
~写真と文~
・ホームページ
「Contact us」のメールアドレスから、ご感想やご意見などをいただけると幸いです。「川のある町」をご紹介していただけるお知らせも、是非お待ちしています。