基本情報
水系 | 利根川水系 |
種別 | 一級河川 |
延長 | 80.8km |
流域面積 | 286.2k㎡ |
平らな土地を流れるからこそ、治水が進められてきた川。
中川の起点は、羽生市大字羽生。明確な水源は特定されていませんが、大小さまざまな農業用水路などが集まって形成された川であると考えられています。
庄内古川や古利根川など様々な河川の旧流路を経ながら、さらに新中川にも分かれていく中川。埼玉県内を通り東京都葛飾区内に入ると、「中川七曲がり」という蛇行区間をつくりながら、綾瀬川に合流し東京湾に注ぎます。
特徴的なのは、「起点から海に流れ込むまでの流路がほぼ平坦であること」!標高10m以下の低い地域を通る割合が多く勾配が非常にゆるやかなため、幾度となく洪水に見舞われてきた歴史を持ちます。
したがって、綾瀬川とともに河川改修や調節池の活用、土地利用の適正化などをおこなうことで流域全体で洪水を防ぐ、「総合治水対策」が進められています。
こうした対策の代表例ともいえるのが、「首都圏外郭放水路」!中川や、周辺の大落古利根川などの水が溢れそうになったとき、水を地下に取り込み地下50m・総延長6.3kmのトンネルを通して江戸川へ流す、という世界最大級の地下放水路です。その現実離れしたビジュアルから「地下神殿」とも呼ばれ、日本が世界に誇る最先端土木技術として広く知られています。
自然豊かな環境とともに歩んだ住民の暮らし。
実は、このような施設などができる前までは、過去何度も起きた洪水によって自然と形成されてきた「自然堤防」を利用することで、洪水被害を最小限に抑えながら集落を形成してきました。
特に、広く右岸側では今でも原形が残っていて、その上には屋敷林・雑木林、農耕地、水際のハンノキ林、ヨシ原、干潟といった、さまざまな生物が生息しやすい環境が整っているんです。
こうした自然環境の良さから、中川が新方川の合流する付近の越谷市中島地内(直轄区間)には、通称「サギコロニー」が形成されています。サギコロニーとは、都市部では非常に稀となったシラサギ類の集団営巣地のこと!
繁殖のために、日本が暖かくなる春から夏にかけて東南アジア等からサギがここへ飛来してきます。この地での営巣が確認されているのは、「ダイサギ」「チュウサギ」「コサギ」「ゴイサギ」「アマサギ」の5種類。バードウォッチャーや写真家が集まる場所としても有名です。
そんな自然と住民の暮らしが共存した中川流域ですが、戦前までは東京へ野菜などを舟で運ぶ農業地域でした。大正時代以降は、染色工業や製紙工業といった、中川の豊富な水を使う工業も盛んになり、産業が発展。高度経済成長期にかけて市街地化が一気に進みました。
ただし人口急増にともない、中川や綾瀬川を流れる生活排水が増加。下水道整備の遅れの影響もあり、20世紀後半には水質が悪化してしまいました。今では下水道の普及などによって、水質は改善しています。
中川沿いの花々が、華やかに季節を知らせる。
中川沿いには、季節の花を楽しめるスポットがたくさん!今回はそのうち2カ所をご紹介します。
1つめは、「権現堂堤(ごんげんどうつつみ)」。
1kmに渡って約1000本のソメイヨシノが咲き誇る、桜の名所です。堤にはイエローが鮮やかな菜の花も咲き、春の訪れをパッと華やかに知らせてくれます。
さらに、私たちを楽しませてくれるのは、桜や菜の花だけではありません!5〜7月には紫陽花、9〜10月には曼珠沙華(彼岸花)、1〜2月には水仙がそれぞれ花を咲かせ、季節に合わせたお祭りもおこなわれているんです。
そして2つめに紹介するのは、「中川やしおフラワーパーク」!
春は、花桃・菜の花・ネモフィラ・ストック・パンジー。夏は、百日草・野カンゾウ。秋は、彼岸花・コスモス・マリーゴールド……と、約1万3000㎡の河川敷に、年中カラフルな花々が咲きます。
遊び広場エリアも設けられ、地域の方々の憩いの場として愛されています。
他の河川と比べ、河川敷が少ない中川。地域の自治体などによって、これまで水面を使ったイベントが数多くおこなわれてきました。
自然や動物たちを守りながら、これからも川との暮らしを楽しんでいきたいですね。