ライフジャケットを着けた「浮き上がりだるま」。だるまが好き過ぎて、だるまのマスコットになってしまった山田るまさんが、今回も登場です。

「楽しく安全に川を楽しむために、多くの人に浮く体験をしてほしい」と、るまさんは話してくれました。「知識や理屈で知る安心感と、体感して分かる安心感は違います。浮くという安心感を体が覚えていれば、万一のときにも慌てずに、浮いて救助を待てるかもしれません」とも語りました。

急流救助プログラムを学んだファーストレスポンダーの国際認定証を持っているるまさん。その知識と子どもたちと一緒に川で遊んだ経験に裏打ちされた言葉には説得力がありました。

「でもね、ライフジャケットを着けずに川に入った経験は一度もないんです」。ならば、ライジャケ・オフ!浮き上がりだるまのるまさんが着衣水泳に挑戦しました。

着衣水泳 体の使い方のコツ

やってきたのは、サイデン化学アリーナさいたま(さいたま市記念総合体育館、桜区道場)の温水プール。館長の榎本道子さんに指導していただきました。水泳指導歴40年以上という大ベテランです。

「着衣水泳は、泳ぐ技術を学ぶのではありません。体をこう使うと浮く、ということを体験して体で学ぶことが大切です」。開口一番。榎本さんの言葉に、るまさんの表情がやや曇ります。

「プールサイドに来て言うのもなんですが、こんな私でも本当に浮きますか。浮力は人並み以上だとは思っていますが、着ぐるみがぬれると相当重くなるんですけど…」。

「浮きます」。榎本さんは、何でもないことのように言い切ります。聞けば、まず大切なのは浮くための正しい姿勢。水の中では仰向けになる。腕と足はやや開き気味に。背中とお尻、足をまっすぐに伸ばす。首を後へ反らして、上を見るような姿勢になる。「ラッコ浮きなどといわれます」。

そして、とにかく力を抜くこと。恐怖心や緊張から体に余計な力を入れると沈みやすくなって、正しい姿勢がとれなくなるといいます。「力を抜いて、呼吸ができていることを意識します。息を吸った状態で脱力すれば自然と顔が水面に出るものです」。

頭では分かっても実際は…浮いた!

頭では分かりましたけどね、と恐る恐るプールに入ると、るまさんがぷかり。「浮いたよー。でも、なんかまだ怖い」。人って、いや、だるまって浮くんです。体勢を上向きにして、手と足を軽く開いて、じっとしながらぷかぷか。でも、ぎこちない感じ。体に力がまだ入っているようです。

「手首を反らせるように意識すると、自然に力が抜けてきます。やってみて」。

榎本さんから助言されると、たちまち「本当だ、これは楽しい」。るまさんは、榎本さん直伝のコツを早々に体得したようです。

安心感。ペットボトル1本で、これ、ぜんぜん違う

体が浮く感覚が分かったら、次に空のペットボトルでどれだけ楽に浮けるか体験しました。体の前面でペットボトルを縦抱きにして、体の芯に沿わせるように意識してしっかりと抱きます。

「ラッコが子どもを抱いて浮いている姿を思い浮かべてください。ペットボトルにしがみつくようなイメージです。でも、体は丸めないで。背中とお尻をまっすぐにして、足は開いて」と榎本さん。

るまさんがようやく笑顔になりました。「さっきとはぜんぜん違います。ペットボトルたった1本なのに、確実に浮いていられるという安心感があります。もし、水に落ちてしまったら、この1本が命を守る分かれ目になるかもしれません」。

ペットボトルを縦抱きにしたり、横抱きにしたりして安心感の違いを試してみます。「これは絶対に縦抱きが良いです。体の安定が断然良い。横抱きだと体がひっくり返そうになっちゃいます。何事もやってみないと分からないものですねえ」。

命を守るために 体で知る

ずぶぬれになったるまさんが、着衣水泳の体験で分かったことを話してくれました。「水に落ちたら誰だってパニックになります。だから、浮くことや浮き方を体で知っていることが大切。浮いていられるという安心感を知っていれば、たった1本のペットボトルがあるだけできっと落ち着けます」。

そして、こう続けます。「ライフジャケットさえ着用していれば、安全というわけではありません。川で遊ぶのは楽しいですが、危険もいっぱいあります。安心感を知るということは、万一のときに慌てないため。命を守るためということを忘れないでください」。

サイデン化学アリーナさいたまでは、以前から着衣水泳教室を開いてきたそうですが、コロナ禍でしばらくお休みしていました。感染状況が落ち着いたのを機に「夏休みの前に再開します」と榎本さんは話していました。詳しくはウェブサイトで。

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