「川のある町 埼玉」の連載がスタートしました。

海のない埼玉県には、たくさんの川の存在があります。そんな川のある町に暮らす人から人へ、バトンを渡すようにして埼玉の「川のある町」を、これからご紹介していきます。

第1回目は「横瀬町」です。
横瀬町は埼玉県の北西部、秩父市の南東部にある町です。
横瀬町役場、連携推進室長の田端将伸さんにお話を伺いました。

「一円融合のまちづくり」
ひとつの円のように必ずものごとは繋がって、「縁」が「円」になって行く。
そんな意味を持つこの言葉が、最近好きだと話す田端さん。

30年以上の役場での仕事の中で、誰かと誰かを繋ぐ仕事をして来られたことに気付き、あらためて人を繋ぐ町づくりがしたいと思うようになったそうです。

田端さんが地域の課題をビジネス化して、持続的に取り組むことを実現させるために立ち上げたのが、「ENgaWA」です。

https://www.instagram.com/engawa_challengekitchen/

「農業に携わることで様々なことを学びまたそれを活かすことで、横瀬町の美しい景観を守って行きたい。そんな想いから収穫した農作物を使って、新しい商品開発に取り組んでいるのがENgaWAなんです。」
「横瀬駅の駅前にある食堂では、栽培した農作物を使った料理を提供し、364日営業しながらお客さんの声を直に聞く。そんな風にして農業への関わり方がひとつの円のようになれたら。」と、語る田端さん。

https://grutto-plus.com/area/chichibu/263/

伺った時にいただいたトマトも、食堂で調理する人たちが育てた甘くて美味しいトマトでした。とっても綺麗な赤い色に元気をいただきました。

そして横瀬町の農業を支えて来た場所のひとつでもある「寺坂棚田」にも、田端さんに案内していただきました。

標高差は40m、東西400m、南北250m、約250枚の水田がある寺坂棚田を訪ねると、梅雨の時期に伺った日の棚田では、雲に隠れた武甲山の景観がありました。

横瀬川(荒川支流)とその支流、曽沢川(そざわがわ)との合流点に位置する埼玉県内では、最大規模の棚田と言われる寺坂棚田の稲作も、志のある人たちで守って行くことが大切だと話す田端さん。

「例えば役場がお金を出して守って行くのは簡単なことかもしれないけれど、お米作りを本気でやりたいという人を集めて棚田を守って行く方が、大切な持続力に繋がる。休みの日でも棚田の草刈りに一生懸命だし、棚田を守りながら美味しいお米を作るという価値観の共有こそがそこにはあるから。」

寺坂棚田を案内していただくと、広い棚田には川の水が高い場所から低い場所へと、作られた水路を通って供給されている様子を見ることができました。

どこまでも同じ川の水を巡らせて作られている棚田は、まるでひとつのコミュニティーだそうです。

水田のひとつひとつが川からいただく水を分け合い、美味しいお米を作って行く。
お隣り同士の関わり合いを川の水が繋げてくれているような風景に、心が熱くなりました。

コミュニティーが作られている場所でもうひとつ大切なことは、ひとりひとりの顔が浮かぶような取り組みだと語る田端さん。

「人を繋いで行く中で、同じ価値観の共有で円を描くように輪を作りながら、そのだいじな作り手をクローズアップしていくことで、さらにその繋がりを強くして行く。そんな取り組みを現在7700人の人が暮らす横瀬町なら、出来ると思う。」と、話してくれました。

確かに町の印象よりも、人の印象の方が強く感じる横瀬の町。そんな印象を私も覚えました。

「印象に残る人」そのひとりとして横瀬町を撮影されている、高澤洋次さんをご紹介します。

サラリーマンの頃から趣味で撮っていた写真が、今では横瀬町の広報用の写真を自ら撮影しているという高澤さん。

芦ヶ久保に氷柱を作ることを自ら提案されて、あしがくぼの氷柱広報として写真を撮りながら、横瀬町のPR活動をされて来ました。

高澤さんが写真の師と仰がれているのは、秩父が生んだ写真家、清水武甲さんです。

清水武甲さんは秩父のお祭りや暮らし、里山の風景などを撮られていて、写真の力で「秩父」という地名を世に広く発信された写真家です。

高澤さんも清水さんの志を汲んで、秩父の発信のためにシャッターを切りながら、武甲デジカメ写真倶楽部も立ち上げ、毎月横瀬町公民館で写真展を開催されています。

この倶楽部に所属してからの8年間の間に観光写真コンテストに応募することが増えたという高澤さんは、今年3月に観光写真コンテスト受賞100作品を達成されました。

高澤洋次さんの受賞作品のいくつかをご紹介します。

「幻想棚田」

横瀬町役場提供

「夢のある町」

横瀬町役場提供

「青空に泳ぐ」

横瀬町役場提供

「横瀬町に生まれて育って、この町しか知らないよ。」と話してくれた高澤さんの言葉が胸に沁みました。

「この町しか知らない・・」

横瀬町を撮り続ける高澤さんの写真には、終わりのない町の息づかいが、見えて来るようでした。

自ら撮られた横瀬町の写真をFacebookなどのSNSにアップロードすると、その高澤さんの写真を見た人たちが、たくさん横瀬町を訪れています。

高澤さんのSNSはこちら:https://www.facebook.com/youji.takazawa

そんな高澤さんと一緒に「ウォーターパーク シラヤマ」を訪ねました。

横瀬川を挟んで右岸・左岸からなる公園です。浅瀬も多いので子供達が水遊びをする光景を、この時も見ることができました。
梅雨の季節なので川の水量が増して、流れが早くなっているようでした。

「昔は小魚がたくさん泳いでいたから、カワセミがいっぱいいた。今はカワセミも少なくなったんだ。川の小魚が少なくなったからね。」

カワセミは横瀬町の鳥だそうです。今年75歳になられる高澤さんの幼少期には、たくさんのカワセミを横瀬川で見た記憶があるそうです。

今回横瀬町を訪ねて感じたことは、川のある横瀬町を、共有できる大切な価値観の循環を、今まさにつくられている人たちに出逢えたことです。

そんな魅力的な人たちが印象的に映る横瀬の町には、確かにだいじな川の存在がありました。

川の流れとともに時を育み、その場所で生き、また生かされるということ。
梅雨の季節に伺った横瀬町でしたが、取材を終えた時にはやっと雨も上がり、武甲山が姿を見せてくれました。

「川のある町 埼玉」では町のご紹介を、町から町へバトンを渡すように繋げて行きます。
川にかかる橋のように、人と人の心にもだいじな橋をかけて行くように、川のある町をご紹介して行きたいと思っています。

横瀬町から次の「川のある町」へ、すでにバトンは渡されました。

次回の「川のある町 埼玉」も、どうぞお楽しみに!

~写真と文~

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