武蔵一之宮氷川神社は、江戸時代ホタルの名所として知られており、江戸城に献上品として納めていたほど。
そこで、数年前より氷川ほたるの会が中心となり、ホタル復活プロジェクトを始めました。
目標は、自然循環によるホタルの自立的生息。
そして、2022年より取り組んでいるのが、ゲンジボタルのエサであるカワニナの生息拡大とその生息調査。
2023年から2024年に、より良いホタルの生息環境を求め、改修工事を実施しました。
改修後初のカワニナ生息調査と昨年の調査の比較を中心にレポートします。
〇カワニナ生息調査(2024年7月22日)について
■場所:氷川神社ホタル池
■日時:2024年7月22日
■方法:【1mコドラート法 各1回】
ホタル池に数か所の1㎡の枠を設置。
その枠内のカワニナやその他生物についてカウントし、その平均値をだす。
■カワニナ生息の目安数
カワニナ:20~30匹/1㎡
※参考:ホタルの幼虫166~300匹/100㎡
〇カワニナ調査の実施
■調査参加者:8名
氷川神社1名
氷川ほたるの会5名
埼玉県職員関連2名
■天気:晴れ
■調査個所:4か所
■調査風景
■調査結果
2023年8月4日
No1.地下水流入口(旧) pH7.0
カワニナ(<10mm) | 2 | タニシ類(<10mm) | 3 |
〃 (<15mm) | 7 | 〃 (<15mm) | 6 |
〃 (<20mm) | 13 | タニシ類計 | 9 |
〃 (<25mm) | 11 | ||
〃 (<30mm) | 3 | エビ類 | 5 |
〃 (<35mm) | 0 | アメリカザリガニ | 0 |
カワニナ計 | 36 | モツゴ | 1 |
2024年7月22日
地下水流入口(旧)
カワニナ(<10mm) | 0 | タニシ類(<10mm) | 0 |
〃 (<15mm) | 4 | 〃 (<15mm) | 2 |
〃 (<20mm) | 2 | タニシ類計 | 2 |
〃 (<25mm) | 8 | ||
〃 (<30mm) | 3 | エビ類 | 0 |
〃 (<35mm) | 0 | アメリカザリガニ | 2 |
〃 (≧35mm) | 2 | モツゴ | 0 |
カワニナ計 | 19 |
2023年8月4日
No2.池流出口付近 pH7.0
カワニナ(<10mm) | 5 | タニシ類(<10mm) | 7 |
〃 (<15mm) | 13 | 〃 (<15mm) | 17 |
〃 (<20mm) | 13 | タニシ類計 | 24 |
〃 (<25mm) | 0 | ||
〃 (<30mm) | 0 | エビ類 | 2 |
〃 (<35mm) | 0 | アメリカザリガニ | 1 |
カワニナ計 | 31 | モツゴ | 0 |
2024年7月22日
池流出口付近
カワニナ(<10mm) | 2 | タニシ類(<10mm) | 1 |
〃 (<15mm) | 4 | 〃 (<15mm) | 0 |
〃 (<20mm) | 3 | タニシ類計 | 1 |
〃 (<25mm) | 1 | ||
〃 (<30mm) | 7 | エビ類 | 0 |
〃 (<35mm) | 3 | アメリカザリガニ | 5 |
〃 (≧35mm) | 0 | モツゴ | 0 |
カワニナ計 | 20 |
2023年8月4日
No3.地下水流入口(新) pH7.0
カワニナ(<10mm) | 7 | タニシ類(<10mm) | 2 |
〃 (<15mm) | 3 | 〃 (<15mm) | 0 |
〃 (<20mm) | 13 | タニシ類計 | 2 |
〃 (<25mm) | 9 | ||
〃 (<30mm) | 2 | エビ類 | 9 |
〃 (<35mm) | 0 | アメリカザリガニ | 9 |
カワニナ計 | 34 | モツゴ | 0 |
2024年7月22日
地下水流入口(新)
カワニナ(<10mm) | 3 | タニシ類(<10mm) | 0 |
〃 (<15mm) | 8 | 〃 (<15mm) | 0 |
〃 (<20mm) | 14 | タニシ類計 | 0 |
〃 (<25mm) | 13 | ||
〃 (<30mm) | 9 | エビ類 | 0 |
〃 (<35mm) | 1 | アメリカザリガニ | 1 |
〃 (≧35mm) | 3 | モツゴ | 0 |
カワニナ計 | 51 |
2023年8月4日
No4.池中心(段差下側) pH7.0
カワニナ(<10mm) | 1 | タニシ類(<10mm) | 0 |
〃 (<15mm) | 2 | 〃 (<15mm) | 2 |
〃 (<20mm) | 2 | タニシ類計 | 2 |
〃 (<25mm) | 0 | ||
〃 (<30mm) | 1 | エビ類 | 6 |
〃 (<35mm) | 0 | アメリカザリガニ | 0 |
カワニナ計 | 6 | モツゴ | 0 |
2024年7月22日
池中心(段差下側)
カワニナ(<10mm) | 0 | タニシ類(<10mm) | 0 |
〃 (<15mm) | 0 | 〃 (<15mm) | 0 |
〃 (<20mm) | 3 | タニシ類計 | 0 |
〃 (<25mm) | 1 | ||
〃 (<30mm) | 0 | エビ類 | 0 |
〃 (<35mm) | 0 | アメリカザリガニ | 1 |
〃 (≧35mm) | 0 | モツゴ | 0 |
カワニナ計 | 4 |
2023年8月4日
カワニナ(<10mm) | 15 | タニシ類(<5mm) | 12 |
〃 (<15mm) | 25 | 〃 (<20mm) | 25 |
〃 (<20mm) | 41 | タニシ類計 | 37 |
〃 (<25mm) | 20 | ||
〃 (<30mm) | 6 | エビ類 | 22 |
〃 (<35mm) | 0 | アメリカザリガニ | 10 |
カワニナ計 | 107 | モツゴ | 1 |
2024年7月22日
カワニナ(<10mm) | 5 | タニシ類(<10mm) | 1 |
〃 (<15mm) | 16 | 〃 (<15mm) | 2 |
〃 (<20mm) | 22 | タニシ類計 | 3 |
〃 (<25mm) | 23 | ||
〃 (<30mm) | 19 | エビ類 | 0 |
〃 (<35mm) | 4 | アメリカザリガニ | 9 |
〃 (≧35mm) | 5 | モツゴ | 0 |
カワニナ計 | 94 |
〇コメント
■カワニナの産仔により増殖に期待
ホタル自然循環の目安数はカワニナ:20~30匹/1㎡。 これに対して昨年の夏の調査では、27匹。今回の結果は、24匹と昨年に比べ、数は減っているが。目安数に入っているのでとても良い結果でした。これは、改修工事を行った後としては、大変良い状況と考えられます。引き続き経過を見守る必要があります。
■カワニナの大きさにばらつきがある
昨年の調査結果と比べて、多少数は減ったものの、カワニナの大きさもよい感じで、ばらつきがありとても好ましい結果だと考えられます。理由としては、ホタルの幼虫の大きさはまちまちですので、様々な大きさのカワニナがいることにより様々な大きさのホタルの幼虫が生息できるからです。また、小型のカワニナがいるということは、順調に繁殖が行われている可能性が高く、ホタル池がカワニナの生息、繁殖に適した環境であると期待されます。これからカワニナの産仔も増える時期になりますので、今後は15㎜以下のカワニナの増加も期待できるかと思います。
■タンパク質含有のエサの継続的給餌
2年前より、カワニナへの給餌が行われていますが、継続的な給餌のおかげもあり、改修後も微減したとはいえ安定した、カワニナの生息数を確認できたと考えられます。
引き続き、水質に留意した上で、たんぱく質含有のエサを与えることで産仔数も安定して増加すると考えられます。
【今後の提言】
■アメリカザリガニの除去
改修の影響もあり、昨年に比べて、タニシ、エビ類、モツゴなどのカワニナ以外の生物が減少している点が、生態系という意味で大変に気になりますが、今後適度に安定してくると考えられます。しかし一番気になるのが、他の生き物が大幅に減少したにも関わらず、アメリカザリガニが9匹もいるという点。昨年は10匹いたので、減少しているとはいえ、改修をして一度リセットに近い形になってもなお9匹いるのが気になりますので、速やかな除去が必要と考えられます。
■池の周りの石のコケがあまり生えていない
池の周りを取り囲む石にあまり苔が生えていないのが気になります。
ホタルは、水辺近くの石の苔などに卵を産みます。そして幼虫からサナギになるときは、水辺から陸上に上がります。その時に苔が生えていると上陸しやすくなります。
そのため、池の周りは石に囲まれていますが、その石に苔が生えていることがとても重要です。
対策としては、苔を植えるということと、苔のまわりに低層の植物を植えて、苔が乾かないようにすることが必要と考えられます。
■池の水の流れを増長させる
以前池の造成を行い全体的池は広くなりました。その時に地下流水入り口も1つ追加しましたが、新たな地下流水入り口の水量も十分ではないため、池全体の水の対流が足りないと考えられます。ゲンジボタルは、流水域に生息生き物なので、今後の対策としては、地下流水入り口の数を増やすことや、水量を増やすこと、下流よりポンプアップして、水を循環させる事などが必要と考えられます。
■まとめ
ホタル池の改修工事が行われ、カワニナの生息数に関して大幅に減少するのではないかと思いましたが、結果は微減で生息数としては、大変安定しているということで安心しました。
ホタルにとって、生息しやすい環境に改修工事を行った事で、生息環境が安定することによって。今後は以前よりも生息数は安定して増えると考えられますが、何が起こるかわからないのが、自然。
継続した調査と調査結果を踏まえた対策をとることで、より良いホタルの生息環境創出ができればと思っております。