小さな子どもでも知っているアメンボ

この間、河原を歩いていると、小さな子ども(3~4歳くらい)が「アメンボ!」と指差し少し離れた母親に向かって叫んでいました。
その時あらためて思ったのが、「アメンボをこんなに小さな子どもが知っている」という事と、「それだけ身近な生きもので有名」だという事。
そして、「これだけ有名でも意外とアメンボの生態は知られていない」という事。
そこで、少しでも超身近な水辺の生きものである、アメンボについて知ってほしいと思い、この場を使い紹介させていただきます。

どうしてアメンボっていうの?

アメンボの名前の由来は、2つあると言われています。
1つは、
「アメ(飴)」のようなにおいがする「ぼう(坊※ぼうや)」で「アメのぼう」が「アメンボ」になった説。
2つ目は、
「アメ(飴)」のようなにおいがする「ぼう(棒※棒のような細長い身体をしているので)」で「アメのぼう」が「アメンボ」になった説。
どちらの説だとしてもキーワードは「アメ(飴)」のようなにおいがする。
実は、アメンボはカメムシの仲間。ご存知のとおりカメムシは臭いですよね。その理由の1つがにおいを出して敵から身を守るため。アメンボもにおいを出すのですが、それが甘い飴のような匂いなのです。

どうして水面に浮いてスイスイ移動できるの?

なんといっても水面に浮ける一番の理由は、とにかく想像以上に軽いからです。
その重さ、種類によって変わりますが、40㎎。グラムにすると0.04g。
1円玉一枚とアメンボ25匹が同じ重さなのです。

アメンボは一見4本脚に見えますが6本脚。
この6本脚のうち、③④の中脚と⑤⑥の後脚の先には、とても細かい毛が生えていて、その毛に口から出した油を塗り付け、水をはじかせているのです。
体の軽さと足先の毛に染みこませた油が水面を浮ける秘密なのです。

スイスイと水面を移動できる秘密も脚にあります。
その理由は脚先の毛に染みこんだ油によって、水をはじく中脚と後脚を上手に使っているから。
主に前に進むときに使うのは、中脚の2本。この2本でオールのように水をかき前に進んでいます。そして後ろ足2本はバランスを取り進みたい方向へ行く舵の役割をしています。
また、アメンボをよく観察してみると流れのある川でも流されずに同じ場所にいることがあります。これは、周りの風景に溶け込んで敵に見つかりにくくしているという説があります。この場合も脚を上手に使い流されないようにしているのです。

アメンボは何を食べているの?どうやって食べ物をとるの?

アメンボは水面に落ちて、上手に動けない虫などを食べます。
ご存じのとおりアメンボは水面を自由に動くことができますので、「バタバタ」ともがく虫の水面のゆれを察知して、獲物をしとめるのです。いわば水面全体がクモでいう所の網のような役割をしています。
仕留めた獲物の食べ方は少しグロテスク。まずは、注射針のような口を獲物の体に刺し、体の中身がとけてしまう液を流し込みます。そして溶けた液を吸うのです。
「水の中でおぼれて、体をとかされ体液吸い取られる。」自分ならそんな死に方は絶対にしたくありません。

人の役に立っているってホント?

人のためになる昆虫の事を「益虫(えきちゅう)」とよびます。そして人の害になるものが「害虫」。
そして、アメンボは益虫と言われています。
それは、稲を枯らしてしまう害虫のカメムシの仲間であるウンカをやっつけてくれるからです。
ウンカの幼虫は水を張った田んぼの稲にすんでいます。そして、ひとたび水に落ちるとアメンボは波紋を察知してウンカの幼虫に近づき食べるのです。もちろんアメンボは人のためにウンカの幼虫を食べているわけではありませんが、このように生き物にとっても人にとっても都合が良い営みを私は本当の意味での「自然共生」だと考えております。

雨が降ったらできる水たまりにアメンボはどこから来るの?

雨が降ったらできる水たまりや公園の噴水など川などつながっていない水辺にアメンボがいることがあります。
なぜでしょう?
理由は簡単。それは、アメンボは飛ぶことができるからです。いつも見かけるのは、水の上なので、あまり飛ぶようには見えませんが、実は最長で500mほど飛んだという報告もされています。

いつどんなところで生まれる?

アメンボのオスとメスが交尾をするのは、5月頃。
卵を産む場所は、種類によって違いはありますが、水中の水草の茎や石など。おしりだけ水中に入れて産卵します。生まれた幼虫は、さっそく水面の上をスイスイと動きながらエサを食べて脱皮をして大きくなります。そして脱皮を5回すると大人である成虫になるのです。
そして11月~3月頃までの寒い時期は、水辺近くの草むらであまり動かない状態で冬を過ごし、春になると水辺で動き始めるのです。

きれいな水辺じゃないとすめないの?

アメンボが水面に浮かんでいる理由の一つが、脚に染みこませた油で水をはじいているから。それは表面張力と言って水同士が引っ張り合う力を利用しています。
そこでこんな実験があります。
水槽にアメンボを入れ、そして水面に洗剤を垂らすとアメンボが沈んでしまうという実験。
洗剤は水より軽いので、水面に浮きあがります。そうすると水面に入るアメンボの脚から出ている油と水面の洗剤がくっつき、水と水が引っ張り合う表面張力がなくなり沈んでしまうというものです。
水を汚す原因の1つが家庭からの生活排水と言われています。もちろんそこには、洗剤などの汚れを含んだものもたくさんあります。
小さな子どもでも知っている身近な生きものであるアメンボがずっと身近な生きものであり続けるために。
少しでもきれいな水辺を残せるように。
皆さんにもできる事からで良いので、水を汚さないような生活を心がけていただければ幸いです。

この記事を書いた人

長谷川 雅彦

埼玉県在住。東京農業大学卒 埼玉県環境アドバイザー

2003年よりファーブル先生として昆虫の面白さ、不思議さ、命の大切さを中心に多くの親子を中心に伝える、ファーブル昆虫教室を実施。通算約10,000名以上の親子が参加をしている。

ファーブルお兄さんの信念は、「子供たちのなぜどうしてに最後まで付き合う事」

日々、子供たちと自然の中で接しながら子供たちの好奇心を発揮することをライフワークとしている。

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