海なし県で、海を学ぶイベント開催!?

2021年9月19日(日)・20日(祝)の2日間にわたり「海なし県・埼玉発!SAITAMA海・川調査団」が開催されました。このイベントは、日本財団、総合海洋政策本部、国土交通省の旗振りのもと、オールジャパンで推進する「海と日本PROJECT」の埼玉版として「海と日本PROJECT in 埼玉県実行委員会」が主体となり、「テレ玉」の愛称でおなじみのテレビ埼玉が協力して、企画・運営されているもの。

イベントタイトルの「海なし県の埼玉で海を学ぶってどういうこと?」という疑問を持たれた方も多いかと思いますが、海を遡ればそこに何があるか考えてみてください。そうです、リバサポが応援している川があるんです。特に今回は、東京湾へと注いでいく大河・荒川にフォーカスを当てて、海と川とのつながりを学んでいくという企画。リバサポを運営している埼玉県水環境課メンバーも講師として参加しています。

なお、今回のイベントの様子は10月12日夕方よりテレ玉の「情報番組マチコミ」でも放送されました。

イベント概要のご紹介

まずはイベントの概要をご紹介していきましょう。

「海なし県・埼玉発!SAITAMA海・川調査団」

  • 協賛・協力:テレビ埼玉、埼玉新聞、埼玉県環境部水環境課、浦和うなぎを育てる会、エイチ・アイ・エススポーツ事業営業所
  • メインMC:勝手に埼玉応援隊「にゃんたぶぅ」/のんたんさん&もりちぃさん
  • 講師:田中仁志先生・木持謙先生(埼玉県環境科学国際センター)、田村和大先生(埼玉県水環境課)
  • 調査団:埼玉県在住の小学生たち(12名)

イベントプログラム

■1日目 〜荒川から東京湾を知る〜
・08:00 テレビ埼玉本社
・09:30 秋ヶ瀬取水堰(志木市)付近(魚道を観察)
・11:30 「松陽丸」約2時間半で荒川から東京湾へ移動
・12:30 船上での学習&アクティビティ

■2日目 〜海につながる荒川の環境を考える〜
・08:00 テレビ埼玉本社
・09:00 都幾川(東松山市)で水質及び生物調査
・12:00 ウエスタ川越(川越市)にて昼食(浦和区名産・うなぎ弁当)
・13:00 座学&実習

……と、2日間のイベント内容は盛りだくさん。まずは1日目の様子からお伝えしていきたいと思います。

1日目 〜荒川から東京湾を知る〜 前半:秋ヶ瀬取水堰

10月19日(土)、早朝からテレ玉に集合したメンバーたち。メインMCののんたんさん&もりちぃさんの楽しい司会進行のもと、イベントテーマをまとめた映像を視聴。その中に登場する荒川に住むうなぎ「うなじぃ」から、今回のイベントの主題となる4つの疑問が投げかけられます。

イベント参加者である小学生たちは、この疑問の答えを探すべく、MCの2人、講師を務める田中仁志先生・木持謙先生(埼玉県環境科学国際センター)、田村和大先生(埼玉県水環境課)たちとともにテレ玉を旅立ちました。

調査団が最初に訪れたのは埼玉県志木市にある秋ヶ瀬取水堰付近。ここで、水堰に併設されている「魚道」を観察することに。埼玉県環境科学国際センターで川の環境や生き物の生態を研究している田中先生、木持先生たちが、「なぜ、魚道が必要なのか?」について解説していきます。

「魚道」とは、海から川へと遡上していく魚たちのためにつくられた水路のこと。産卵や成長のために川と海を行き来する魚たちがいること。その中にうなじぃたち埼玉のうなぎもいること……でも、人間がダムや取水堰などをつくったため魚たちが上流に行けなくなったから、この「魚道」が必要になったことなどを勉強しました。

また、秋ヶ瀬取水堰が、埼玉で暮らす人たちの飲み水の元になっているということも学習し、パックテストという簡易水質検査も体験。水質の基本的な測り方やそこからわかるさまざまな情報などを学びました。

1日目 〜荒川から東京湾を知る〜 後半:東京湾

秋ヶ瀬水堰での活動を終えた調査団は、釣り船「松陽丸」に乗り込み、荒川を下っていきます。舟の上では、埼玉県環境科学国際センター監修によるクイズを出題。その内容をご紹介しましょう。

小学生たちはこのクイズを通じて、川と海についてさらに理解を深め、うなじぃの疑問に対する答えの手がかりをつかんでいきました。

2時間半に渡る舟の旅の後、目的地である東京湾に到着。舟の上でうなぎを観察し、その生態や特徴などを学習。実際に子どもたちに触れてもらう「うなぎのつかみ取り大会」も開催され、大いに盛り上がりました。

さらに、ここでも水質検査を実施。今、問題となっているマイクロプラスチックに関する知識や、うなぎが産卵を行う海の水の現状などを学んだ小学生たち。はじめての経験に目を輝かせながら、1日目は解散となりました。

2日目 〜海につながる荒川の環境を考える〜 前半:都幾川・くらかけ清流の郷

2日目もテレ玉本社からスタート。調査団メンバーはバスに乗り込み、一路、埼玉県東松山市にある都幾川・くらかけ清流の郷へと向かいます。

都幾川は荒川水系の川のひとつ。今回、調査を行ったくらかけ清流の郷は、その上流域に位置する鞍掛橋周辺の施設で、バーベキューや川遊びが楽しめる人気スポット。

田中先生・木持先生の指導のもと、安全に川に入れる服装や生き物をすくう網などの準備を整え、柵もガードレールもないちょっとノスタルジックな鞍掛橋の下で早速調査を開始します。

都幾川での調査のメインは「どんな生き物がいるか?」を川に入って確かめること。本格的な調査開始の前に、埼玉県水環境課の田村先生から水質に関するレクチャーが入ります。

「川や海の生き物と、水質はセットで調べるのが基本!なぜなら、生き物たちは水がなければ生きていけないからです。だから、先に水質をチェックしてみましょう」

ということで、昨日学んだ方法で、都幾川の水質を調査して、秋ヶ瀬や東京湾の水と比較。その結果、都幾川の水の透明度や溶存酸素(水の中の酸素量)がかなり良好であることがわかりました。これなら生き物たちの調査にも期待が持てそうです。

さあ、いよいよ川に入って生き物たちを捕まえていきます。
「あ!いた!」「エビだ!」「カエルだ!」「魚がなかなかとれない!」
子どもたちの歓声が響く中、約1時間半に及ぶ調査があっという間に終了。その結果、以下11種類もの生き物が見つかりました。

調査団が見つけた都幾川の生き物たち

  • コオニヤンマのヤゴ(幼虫)
  • コヤマトンボのヤゴ(幼虫)
  • ヒラタドロムシ
  • タニガワカゲロウ
  • マシジミ
  • ヒゲナガカワトビケラ
  • ヌマエビ
  • シマドジョウ
  • オイカワ
  • ジュズカケハゼ
  • カエル

実はこの日は雨の後で、生き物たちの一部は下流に流されてしまっていたようですが、それでもたくさんの生き物たちを見つけることができました。

田中先生曰く、「川の環境を図る基準になる『指標生物』というものがいて、今回見つけたコオニヤンマのヤゴとヒラタドロムシは4段階中、上から2段目、ヒゲナガカワトビケラは1段目や2段目のきれいな川に棲む生き物なんです。また、それぞれの生き物たちが住める川の条件は水質だけじゃありません。水の量や川底の状態、植物や石などの住み家になる場所の有無なども大きく関係してくるんです」とのこと。「今、たくさんの生き物たちと出会えたこの水が、東京湾に流れていくんです」と締めくくり、小学生たちも、今、自分たちの体験したことが、昨日の学びとどうつながっているのかを理解して、大きく頷いていました。

2日目 〜海につながる荒川の環境を考える〜 後半:ウエスタ川越

都幾川でずぶ濡れになるまで調査にいそしんだ一行は、再びバスに乗り、埼玉県川越市内にある公共施設・ウエスタ川越へ。2日間の調査と学びをまとめていく時間へと入っていきます。

でも、その前に腹ごしらえ!今回は浦和のうなぎを広め、食文化の継承や後継者の育成などの活動を展開、地域の活性化や観光振興に取り組んでいる浦和のうなぎを育てる会が美味しいうなぎ弁当を用意してくれました。

お腹もいっぱいになったところで座学コーナーへ。「うなじぃたちが幸せに住める川ってどんな川だろう?」などのテーマでさまざまな講義が行われました。

因みにこちらは座学スライドの一部抜粋。難しい内容もありましたが、海・川で体験したこととリンクしていることも多く、子どもたちはしっかり理解を深めている様子。ここまでの復習をかねて、水質の測り方、埼玉県の河川の水質状況、生き物たちが棲みやすい環境、埼玉の川に棲む生き物たちの多様性、外来種の問題などを勉強していきました。

さらに川越市環境対策課の島居先生から、川越を取り巻く川と流通の歴史や、川に棲む生物などについてレクチャーを受け、さらに埼玉県水環境課の田村先生から、海と川のつながりを深さ、川が汚れれば海も汚れてしまうこと、川をきれいにすれば海もきれいにできることなどを学んでいきます。

座学の最後は、再び埼玉県環境科学国際センターの田中先生が登壇。海洋プラスチック問題に関する講義になります。今後もマイクロプラスチック(微細なプラスチックゴミ)が増え続けて海の生き物に大きな影響を与えると予想されていること、埼玉県は海なし県ではあるものの総面積の3.9%を海につながる川が占めていること、だからこそ、川の環境を考え、守っていかなければならないことなどを解説していきました。

中でも、身近な日用品がゴミになったあと、分解されるまでにかかる年月を紹介する場面では「釣り糸が600年も残るのか!」という驚きの声が。

田中先生は「海で生まれたうなぎたちは川を上っていきます。逆に川に捨てられたプラスチックが海へ流れ込んでいくんです。つまり、海がない埼玉県でも、プラスチックゴミを出せば、東京湾から海を汚してしまうことだってあるんです」と説明。小学生たちもメモを取りながら熱心に耳を傾けていました。こうして生まれた問題意識が、このあとの実習へとつながっていきます。

さあ、イベントもいよいよ大詰め。小学生たちによるワークショップへと移ります。最初は海洋プラスチック問題を目で見えるかたちで体験して考えるきっかけをつくる万華鏡づくりに取り組みました。

このワークショップは、東京湾で採取された微細なプラスチックゴミ(マイクロプラスチック)を含んだ砂を使って万華鏡をつくるというもの。透明なもの、赤や緑などの色が付いたものが万華鏡の中で動く様子を見た小学生たちからは、「できた!」「きれいに見える!」といった感想が聞こえてきます。

こうした様子を見た田中先生は「この万華鏡がきれいに見えるということは、それだけ海や川が汚れてしまっていることなんです。だから、見て『きれいだな』って思うだけじゃなくて、この万華鏡を傍らに置いて、海や川のことを思い出して考えるきっかけにしてください」と話してくれました。

次のワークショップは、今回のイベントのテーマでもある「うなじぃの4つ疑問」について、4つの班に分かれて議論して、答えを決めていくというもの。ここからは小学生たちのご家族も参加し、様子を見守ります。各班で活発な議論が行われ、いよいよ発表へ。

そして、最後のワークショップでは一人ひとりが、「うなぎたちの住みやすい海・川とは?」をテーマにポスターを制作して全員の前で発表していきました。

個性豊かな作品は埼玉新聞や浦和のうなぎを育てる会加盟店に掲載されることに。ポスター完成後は、MCを務めてくれたのんたんさん&もりちぃさんや先生たちからのメッセージを聞いてイベントは終了しました。

小学生たちからは「いろんな場所に行けて、いろんなことを知れてよかった!」「クラスのみんなに自慢したい!」「ずっと調査していたかった!」「貴重な体験でした!」などの感想が。2日間に渡るイベントで、一人ひとりが川と海とのつながりを深く理解してくれたことが伝わってきました。

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