埼玉県は2月10日、さいたま市浦和区の埼玉会館で、川の再生交流会2024を開催しました。交流会は今年で30回目。第1部では、埼玉県の川づくりや浸水被害対策についての講演、黒目川筋肉部による事例発表、県からのリバサポの取組状況の報告、リバサポアワードの表彰式が行われました。午後にはテーマ別ポスターセッションや分科会も開かれ、参加者は川について情報を交換し、議論を交わしました。今回は川の再生交流会について振り返ります。

埼玉は洪水が発生しやすい?意外と知らない身近な対策

第1部では、埼玉県県土整備部参事兼河川砂防課長の中須賀淳氏が「埼玉県の川づくり ~浸水&親水対策は身近にある~」と題し講演しました。中須賀氏によりますと、「埼玉は意外と洪水が起こりやすい」といいます。埼玉県は河川の合流点が多く、本川から支川への逆流や支川から本川への配水不良など、洪水時に水位が上昇しやすい原因を抱えている、さらに、南東部はお椀のような地形になっていることなどから、雨水がたまりやすくはけにくい地形になっているのだそうです。

 そのため、埼玉県内の河川では様々な対策が行われてきました。利根川では堤防を後方にずらして川幅を広げる工事や堤防決壊を防ぐための工事などを実施。また、さいたま市緑区の埼玉スタジアム2002の横の広場や川口市の新郷東部公園など、私たちの身近な施設が治水対策にも活用されています。これらの施設は大雨が降った際、水を貯める役割も担っているのだそうです。

 また、高度経済成長期に市街化が急速に進んだことで、本来は水を貯める役割も担っていた田んぼが減少し、雨水が一気に川に流れ込むようになりました。そのため、川の水位が上がりやすくなり洪水が起こりやすくなってしまったといいます。中須賀氏は対策として「古くから埼玉県は全国でも先進的に流域対策という取り組みを行っています」と説明しました。具体的には雨水を貯めるための池を造ったり、学校のグラウンドにたまった水をあえて川に流さないような造りにしたりする対策です。このような工夫や対策で、私たちは安全に生活できているということがうかがえます。

中須賀氏の講演で、埼玉県内の様々な場所が洪水対策に活用されているということが分かりました。皆さんの身近な施設が、私たちの身を守ってくれているかもしれません。

若者が川の活動盛り上げる

続いて、川の国応援団である「黒目川に親しむ会」から黒目川筋肉部が登壇しました。小学生から大学生までの若者で結成された黒目川筋肉部は、高校生が中学生、中学生が小学生と、上の代が下の代をサポートしながら川で活動。昨年開催された第15回いい川・いい川づくりワークショップin東北で、川と真剣に向かい合う勇気とやさしさにあふれた活動に贈られる「森清和(もりせいわ)賞」と「川に親しみ楽しむ原点で賞」を受賞しました。

そんな黒目川筋肉部は発表で、中学生や高校生などの若者が参加することで、後継者が増えるという利点がある、また、参加する学生自身も将来の可能性が増え、学校以外での遊び場が増えるそうですと話しました。当日は、小学生から大学生までの6人が登壇。楽しい発表に会場が湧きました。

リバサポの取組状況の報告

県水環境課からは、リバサポの取組状況を報告しました。リバサポの概要について説明した後、これまで川に関心がなかった人たちに興味を持ってもらえるよう、普段何気なく川に来ている人たちに「川好き」になってもらうリバサポ×○○に取り組んでいることや、リバサポアワードなどを説明しました。リバサポでは、これ以外にも川を好きになってもらうために様々な取組を行っているので、ぜひ積極的に参加してほしいと呼びかけました。

リバサポアワード授賞式

第1部では最後に、リバサポアワードの授賞式も行われました。リバサポアワードとは、川の保全・共生に向けた活動の活性化に向け、川での優れた活動や川の魅力を伝える画像を県民の皆さんに選んでいただき、広く発信するものです。今回は川での優れた活動を県民投票で選ぶ「活動部門」では『県民(団体)部門』、『企業部門』からそれぞれ2団体、川の魅力を伝える画像を県民投票で選ぶ「魅力発信部門」では1枚、今年新設した川の共生・保全に長年にわたって貢献した個人、団体、事業者の活動に対して贈る「川の国貢献賞」では1団体が選ばれました。

活動部門のうち、県民(団体)部門では「Epic Enviro Buddies」と「越谷市カヌー協会」が授賞しました。

Epic Enviro Buddiesは戸田市の彩湖・道満グリーンパークでゴミ拾い活動を行う中学生のサークルです。楯を受け取った三輪風乃衣さんは「3年前のコロナ禍にゴミ拾い活動を始めました。制限があり大変でしたが、メンバーみんなで協力し、宝探しのようにゴミを拾いながら自然を楽しむ時間は私にとってかけがえのない時間でした。これからも私たちらしく楽しみながら活動を続けていきたいと思っています」と話しました。

越谷市カヌー協会は、カヌーに乗って河川で環境美化活動やイベントを行っています。同協会代表の松永泰さんは「これからも市民の方のためになる、そして喜ばれる活動を行っていきたいと思います」と述べました。

 企業部門では株式会社ナックプランニングの「とめきちお掃除隊」と明治安田生命保険相互会社埼玉本部が授賞しました。

とめきちお掃除隊は同社とNPO法人共同生活推進協議会と共に街巡りをしながら戸田市内の荒川土手の清掃活動などを行っています。出席した平井まゆみさんは「授賞し大変うれしく思っています。引き続き皆さまに勉強させていただきながら活動を続けていければと思います」と語りました。

明治安田生命相互会社埼玉本部はNPO法人セイラビリティ越谷とハンザディンギー親子体験会などを開催しました。同社埼玉本部執行役の田中泰行さんは「これからもさらに発展し、いろんなところでの川の活動を頑張っていきながら地域に貢献していきたいと思います」と話しました。

続いて、魅力発信部門では、リバサポのポータルサイトやSNSで発信した魅力を伝える画像のうち、アクセス数が多かった10件を選択。10枚の中から最も良い画像を県民に選んでもらいました。その結果、魅力発信部門では秩父市の荒川で行われた川瀬まつりの写真が選ばれました。

最後に川の国貢献賞では草加市カヌー協会が表彰を受けました。同協会は水辺環境の改善と安全確保、スポーツ文化の普及、行政や環境団体との連携により水辺を活かした安全で親しみある街づくりを進めています。同協会代表理事の大原宏行さんは「これからも皆さんの力を借りて楽しみながら活動を広げ、来年もこの場に戻って来られるように頑張りたいです」とあいさつしました。

ポスターセッションでアピールも!

第2部では会場をホールから展示室に移し、ポスターセッションを実施しました、ポスターセッションには川で活動・研究する33の団体、学校、企業、自治体が参加。それぞれの活動や研究の成果などを来場者に伝えました。

第2部では会場をホールから展示室に移し、ポスターセッションを実施しました、ポスターセッションには川で活動・研究する33の団体、学校、企業、自治体が参加。それぞれの活動や研究の成果などを来場者に伝えました。

アイデア共有 次につなげる

第3部ではテーマ別に分かれ、分科会が行われました。テーマは①川ゴミ②歴史・文化を活かした川づくり③川と防災④豊かな水辺空間づくり⑤水辺の生物⑥水質改善の6つ。参加者は事前に選んだテーマの部屋に入り議論を交わします。

川ゴミの分科会では、拾った後のごみの処理方法や今後の活動などを話し合いました。団体によって、ごみの処理方法は違うそうで「行政と連携し回収してもらっている」「分別が難しく産業廃棄物扱いになるので処理にお金がかかる」「薬品のようなものが落ちている時もあり、気をつけながらやっている」という声が出ました。一方で、「私たちが活動する川は比較的綺麗でごみが多くないので、分別して処分している」という声も。各団体や企業によって状況は様々だということがわかります。

また、今後の活動については、「新入生にどうPRして部活に入部してもらえるか考えなければいけない」と川で活動する部活に所属する高校生が吐露しました。一方で、企業からは「今の子たちはSDGsへの意識が高いと感じる。私たちの川での活動を知って、『(SDGsの)目標を達成したくて入社しました』という人もいる」と話しました。

水質改善の分科会では、高校生が部活動などで行った実験を発表。発表内容などをもとにしてディスカッションを行いました。

発表した高校生は、学校周辺の川の水や生物について研究結果を報告。川によって生息する生き物が異なることや川の汚染の原因について自身の考えを発表しました。汚染の原因については、川によって異なるものの「田畑の肥料流出」や「生活排水」が原因であることを示唆していました。

気軽に参加を

全国屈指の“川の国”である埼玉県。交流会は身近な川で様ざまな活動をする人や、川への思いが強い人など、多種多様なキャラクターが集まり、大いに盛り上がりました。来年も埼玉会館で2月8日に開かれる予定。興味のある人はぜひ足を運んでみてください。

関連リンク

○県HP「令和5年度 川の再生交流会」:
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0505/kawanokuniouendan/r5kouryukai.html

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