2024年10月6日、高麗川に架かる獅子岩橋で「アユ漁体験と魚とり」が開催されました。このイベントは荒川本流域中流域の環境や水質を調査し、生態系の保全に取り組んでいる「NPO法人荒川流域ネットワーク」の活動の一つ。地域に伝わる伝統漁法「アユの地曳き網漁」を現代に伝えながら、水辺の生き物について学ぶことができます。因みに例年は8月前後に開催されていましたが、今年は台風や雨の影響で10月開催となりました。

今回は埼玉の川の生物を撮影することをライフワークとしている水中カメラマンの市塚徹さんにもご協力いただき、水陸両面からの写真を交えながら、当日の様子をお伝えしたいと思います。

イベント概要

・日 時:2024年10月6日(日)午前9時30分〜お昼過ぎまで
・来場者:地域の方々、一般参加者、スタッフ 総勢約70名
・主 催:NPO法人荒川流域ネットワーク
・場 所:高麗川獅子岩橋周辺

川の環境保全と伝統漁法「アユの地曳き網漁」を伝えるために

「地曳き網」と聞くと海を連想される方も多いのではないでしょうか。そこでまずは、今回のイベントを主催しているNPO法人荒川流域ネットワークの金澤さんに、日頃の活動も交えてお話を聞いてみました。

「私たちは荒川水系の川の本流域中流域の環境を調査・保全している団体です。アユの地曳き網漁は、古くからこの地域の夏の風物詩として親しまれてきましたが、アユの数が減ってきたこともあり、最近まで廃れてしまっていました。このイベントでは、子どもたちに魚捕り体験を通じて、今、この川にアユや他の魚たちがどれくらいいるのか?しっかり育っているか?といったことを一緒に調べて学びながら、この伝統漁法を現代に伝えているんです」とのこと。

アユを追い込むための網を上流に仕掛ける関係者のみなさん
撮影の準備を整える水中カメラマンの市塚徹さん

いよいよ「アユの地曳き網漁」がスタート

アユの地曳き網漁の手順はとてもシンプル。上流にアユを追い込むための仕切り網を張り、下流から川底をさらうように刺し網を引っ張っていくというもの。まずは子どもたちがイベントスタッフの指導のもとでライフジャケットを身につけていきます。

スタッフが用意したライフジャケットを着て準備を整える子どもたち

準備が整ったらイベントの開会挨拶。イベントの趣旨や全体の流れを説明していきます。そしていよいよみんなで川の中へ。大人たちが手持ちの網で刺し網が浮かないように押さえつつ、子どもたちが川幅いっぱいに張った刺し網を引いていきます。水は少し冷たかったものの、みんなで力を合わせてグイグイと川を上っていきました。

開会の挨拶をするNPO法人荒川流域ネットワークの金澤さん
川底をさらうように刺し網を押さえる大人たちと、元気なかけ声と共に力を合わせて刺し網を引っ張る子どもたち
水面下から網や魚の動きを追う水中カメラマンの市塚徹さん
水中から見た地曳き網の様子
ゴールとなる上流の網までの距離は数百メートル。30分ほどかけて、膝まで水に浸かりながら足場の悪い川底を進みます

ついに網が上流に到達!次々とアユを捕まえていく子どもたち

仕掛け自体は非常にシンプルなアユの地曳き網漁ですが、実際に体験してみるとこれがなかなか大変な作業。それでも、断続的に降る小雨の中、元気よく網を引っ張っていった参加者たちは、ついにゴールとなる上流の網に到達しました。さあ、ここからはイベントのクライマックス。網で追い込んだアユを捕まえていく工程に入ります。

網にかかった魚を外していく子どもたち
はじめて生きた魚に触れるという子どももたくさんいましたが、みんな楽しそうに捕まえていました
「とれたー!」という歓声があちらこちらから聞こえてきます
アユを始め、さまざまな魚たちを捕ることができました!

網にはアユを中心に、大小さまざまな川魚がかかっており、それを一匹ずつ手で外して捕まえていきます。日頃、生きた魚とふれあう機会が少ない子どもたちも、楽しそうな表情で網にかかった魚を探していました。

地曳き網の後は、食べて、学んで、遊ぶ時間!

大いに盛り上がった地曳き網の後は、休憩を挟んでみんなでアユの塩焼きを食べるコーナーへ。とは言え、焼き上がるまで少し時間がかかるため、その間は、NPO法人荒川流域ネットワークの方が用意したテナガエビやワカサギの唐揚げを食べたり、捕れた魚を観察したり、投網体験ゲームをしたりしながら、思い思いに川を楽しみます。

みんなで捕まえた魚たちを水槽に移して展示。子どもたちは興味津々で眺めていました
参加者から人気を集めていた埼玉県産ワカサギの唐揚げ
同じく埼玉の川で捕れたテナガエビの唐揚げも大人気でした
ちらはアユの絵が描かれた木片を捕まえる投網体験ゲーム。重さのある投網に悪戦苦闘しながらも、果敢に挑戦する子どもたち

中でも子どもたちの注目を集めていたのは、捕れた魚や生き物たちを観察しながらその生態を解説していく「ミニ水族館」。その生き物が在来種なのか外来種なのか。どんな暮らしをしているのか。数が減っているのか増えているのか。食べたら美味しいのかどうか……など、子どもたちも真剣に耳を傾けていました。

捕れた魚や生き物を小さな水槽に取り出して生態をレクチャー
網にかかった生き物たちを紹介しながら、次々と書きだしていきます

お楽しみのアユの塩焼き。会場から聞こえる「おいしいっ」の声

さて、時刻もそろそろお昼過ぎ。お楽しみのアユが焼き上がりました。魚を捕まえることと、おいしく食べること。それを一つの営みとして体験できるのもこのイベントの醍醐味。みんな口々に「おいしいっ」と言いながら、パクパクとアユにかぶりついていました。

アユが焼き上がるのを今か今かと待ちわびて、列をつくる参加者のみなさん
アユの塩焼きを楽しむ川越女子高校のみなさん。今回のイベント運営スタッフとしても大活躍していました

初めて触れた魚の感触はきっと忘れられない

最後にNPO法人荒川流域ネットワークの金澤さんにイベントの感想をうかがいました。

「今回はアユもたくさん捕れて、子どもたちも楽しんでくれたようでよかったです。僕も小さなころ、同じように川で魚を捕っていましたが、はじめて触れた魚の感触は、未だに記憶に残っているんですよね。このイベントでの体験が川に興味を持つきっかけになってくれたらいいかなと思っています。アユ以外の魚もいろいろ捕れて、子どもたちに紹介できたのもよかったですね」

そんな金澤さんの思いが通じたのか、参加した子どもたちはみんな満足そう。「もっとおさかなとりたい!」と、次回参加への意気込みを語る小さなお子さんもいました。毎回、希望者ですぐに埋まってしまうという人気イベントですが、興味がある方はぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

NPO法人荒川流域ネットワーク公式サイト
https://arakawa-ryuiki.net/

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