2024年12月7日、新座市を流れる野火止用水で「令和6年度HUGネットクリーンデー」が開催されました。野火止用水は、1655年に玉川上水から分水してできた全長約24kmの用水路。東京都立川市を起点に埼玉県新座市を通って、埼玉県志木市の新河岸川へと続いています。また、用水周辺には遊歩道が整備されており、自然を楽しめる憩いの道になっています。

この日は、「HUGネット」に所属するボランティア団体の皆さんをはじめ、地域の町内会の方々や近隣の大学の学生、市職員など、約50人が参加しました。野火止用水の環境を守るHUGネットの紹介と併せて、当日の様子を振り返ります。

イベント概要

・日 時:2024年12月7日(土)午前9時〜11時頃まで
・参加者:HUGネットメンバー、一般市民、市役所職員(約50名)
・主 催:緑と野火止用水を育む会(HUGネット)
・場 所:野火止用水・伊豆殿橋周辺

野火止用水の環境保全に取り組む「HUGネット」

主催である「ふるさとの緑と野火止用水を育む会(通称:HUGネット)」は、十文字学園女子大学が中心となって呼びかけ、複数のボランティア団体や町内会、行政、大学で構成された地域ネットワークです。「安らぎと憩いを求め、野火止用水とその周辺の緑に人が集い、子どもが親しめる空間づくり」を目指し、現在は「ホタル再生プロジェクト」や「子どもの自然体験プロジェクト」などを推進。所属団体同士が連携し、それぞれの持つ知識や技能を活かしながら、野火止用水の豊かな自然を守る活動を続けています。

今回のクリーン活動は「自然環境保全プロジェクト」の一環。HUGネットでは例年9月中旬に用水の清掃を行っていましたが、今年度は野火止用水が流れる東京都内6市が一斉に清掃活動を行う「野火止用水6市共同クリーンデー」の日程に合わせて実施されました。

HUGネット代表の星野敦子さんは「せっかくなら同じ日に、同じ想いで用水をきれいにしたかったんです」と話します。

地域ごとに活動内容は異なりますが、野火止用水を守りたいという思いはどこも同じ。この日を共有することで、それぞれの取り組みがつながる貴重な機会となるでしょう。

3つのコースに分かれて清掃開始

当日は天候に恵まれ、快晴。集合場所の西分集会所には続々と参加者が集まってきました。

時間になると、野火止用水沿いで清掃・環境保全ボランティアをしている「川爺」の代表者が指揮を執り、開会のあいさつからスタート。「みんなで野火止用水をきれいにしましょう」と呼びかけます。

清掃作業は、以下の3つのコースに分けて実施。Cコースのみ集合場所から少し離れているため、「野火止用水美化・ピカ隊」の皆さんがA・Bコースとは別行動で作業を進めてくださいました。

●Aコース:西分橋から北上し、国道254号までの緑道
●Bコース:西分橋から南下し、伊豆殿橋までの緑道
●Cコース:本田緑道から野火止用水史跡公園までの緑道

さらに、参加者は作業内容ごとに以下の2つのグループに割り振られました。その後、トングやごみ袋、剪伐用の道具を手に取り、いよいよ清掃作業が始まります。

●用水クリーングループ:用水や緑道沿いに放棄されたごみの収集・分別を担当
●環境整備グループ:外来植物の除去や、シラカシ幼木・アオキなどの低木常緑樹の除伐作業を担当

緑道沿いだけでなく、用水の中のごみも回収し、水の流れを妨げる倒木なども撤去。少しずつ景観が整っていきます。

ごみ拾いだけじゃない!若木の伐採も実施

木が生い茂る場所では、のこぎりを使った剪定作業も実施。「雑木の会」の方からは「若木のうちに切らないと手に負えなくなってしまう。だから定期的にこういった活動をすることが大事なんです」と教えていただきました。ただ、若木とはいえ結構な力仕事。数人がかりで、木を伐り、ごみ袋に詰めていきます。

作業を始めて数十分。視界が開け、光が差し込む明るい道へと変わりました。

約2時間にわたる清掃作業を終え、再び集合場所へ。今回の活動では、ごみの回収はもちろん、大量の枝木も剪定することができました。

クリーン活動を終えて。参加者の声をご紹介

ごみをまとめた後に記念撮影を行い、クリーン活動は無事に終了。参加者の皆さんから伺った感想を一部ご紹介します。

にいざプラスカレッジの学生
「ごみ拾いだけでなく、木の伐採も景観を守るための大切な作業だと知ることができました」

町内会の方
「住み慣れた場所ですが、みなさんと一緒に活動することで、野火止用水をもっと大切にしたいという気持ちが強くなりました」

新座市観光ボランティアガイド協会の方
「この辺りは観光ガイドでよく訪れますが、清掃活動には初めて参加しました。きれいな野火止用水を案内できるのは、こうした活動が支えているのだと改めて感じましたね」

続いて、川爺の皆さんからもお話を伺いました。

川爺の皆さん
「私たちは普段、ホタルを増やすという目的で、用水をきれいにする活動をしています。いつもは川爺のメンバーだけで清掃していますが、今日のように川を愛する皆さんが集まり、協力しながら活動できたのはとても嬉しいですね」

最後に、主催団体であるHUGネットの星野敦子さんにも、今回の活動についてお話を伺いました。

HUGネット・星野敦子さん
「今回は町内会からの参加が特に多く、初めて活動に加わってくださった方も多数いらっしゃいました。地域のコミュニティが清掃活動や環境保全に興味を持ってくださるのは嬉しいです。また、新座市の協力もあり、集めたごみや剪定した枝木の処理を行政が引き受けてくれるなどの支援をいただきました。やはり、こうした活動を進める上では、地域や行政の協力が欠かせません。本当に感謝しています」

さらに、「以前はよく見かけたカワセミの姿が、最近はめっきり減ってしまいました。美しい野鳥が再び多く飛び交うような環境に戻していきたいですね」と、野火止用水への想いも語ってくださいました。

地域の人々と行政の協力によって美しい景観が保たれている野火止用水。HUGネットを中心に、町内会や地域団体が連携し、環境保全の取り組みが続いています。今後の活動にも注目です。

なお、近年、川爺と地域のホタル愛好会が中心となり進めている「ホタル再生プロジェクト」が成果を上げ、野火止用水でホタルが見られるようになったそうです。2024年5月下旬には鑑賞イベントが実施されました。今年もまた、ホタルの舞う美しい風景を見られるのが楽しみですね。

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