長瀞から戸田公園……80kmを下るウルトラなリバーレース
2021年11月14日、長瀞カヌーヴィレッジ(秩父郡長瀞町)〜戸田公園(戸田市)の実に80kmをSUP(スタンドアップパドルボート)で下るリバーレース、その名も「ULTRA A80」が開催されました。
今年は野生動物保護の観点などから、スタート地点を当初予定していた長瀞から荒川大橋へと変更し、午前9時にスタート。ゴール地点戸田公園までの距離は53 kmと短縮されましたが、それでもなお“ウルトラ”なリバーレースとなりました。
公式サイト:http://ultra-a80.cabbo.jp/
なお、このイベントはWITH RIVERによる清掃イベント、「リバークリーン@荒川」との同時開催。リバークリーンの様子はこちらの記事でご紹介していますので、合わせてチェックしてみてください。
イベント概要
- 日時:2021年11月14日(日)9時スタート
- スタート地点:荒川大橋(埼玉県熊谷市)
- ゴール地点:戸田公園(埼玉県戸田市)
- 参加人数:14名
- 主催:ULTRA A80
- 協力:SAITAMAリバーサポーターズ
- 後援:長瀞町観光協会
そもそも、SUPレースってどんなもの?
SUP(スタンドアップパドルボート)自体に馴染みがない方も多いと思うので、まずは基礎知識から少しだけ解説していきましょう。SUPとはその名の通り、ボートの上に立って、パドルをこいで水上を移動していくスポーツ。川だけでなく海や湖などでも楽しめるアクティビティとして人気を集めています。
今回のULTRA A80は、このSUPを使って川を下っていくいわゆる「ダウンリバーレース」といわれるカテゴリ。上位入賞者でも5時間以上こぎ続けてようやくゴールできるというハードなレースとなりました。
とはいえ、ULTRA A80は、ただハードな川下りを目的にしているわけではありません。埼玉を横断する荒川を舞台とした、一大リバースポーツフェスティバルを目指し、以下の3つの目標を掲げています。
- Oppotunity 雇用機会、リクリエーション機会の創出、安全な遊び方/環境保護の啓蒙活動
- Community リクリエーションを軸とした川沿いの市民のコミニュティー
- Economy 経済効果、川沿いの経済の発展やスポーツの発展
なにより、このレースを通じて川が自分の遊びやスポーツのフィールドになることにより川という資源への興味が高くなり、環境保護やサステイナブルなライフスタイルへの意識を高めていくこと。それがULTRA A80の真のゴール。将来的にはもっと広く参加できるイベントとして進化していきたいとのこと。今回のレースはその第一歩として開催されました。
レースのつくり方からすでにウルトラ!
当日のレースの詳しい様子や結果は公式サイトでもご覧いただけるので、リバサポでは主にレースの取り組みについてご紹介していきたいと思います。
まず、これだけの長距離を下るレースとなると、かなり豪快で過酷なものを想像しますよね。でも、ただ豪快で過酷なのかといえば、そうではありません。これだけの規模で安全にレースを行うために、運営チームは緻密で繊細なレースづくりに取り組んでいるんです。
コース設定もそのひとつ。運営メンバーたちは荒川上流から下流まで何度も試走を繰り返し、1日で安全に下りきれるコースを綿密に検討した上で今回のレースを開催しています。さらに、伴走チームを用意して万が一のサポート体制もしっかり整えるなど、川と向き合う真摯な姿勢もまさしくウルトラの名にふさわしいと言えるでしょう。
最長7時間半に及ぶ熱戦
そんなウルトラなレースに参加しているのは一体どんなひとたちなのでしょうか。上位入賞者の多くはリバーガイドなど、ボートのエキスパートでしたが、ただ速さを競うのではなく、上流から下流へとつながる荒川の流れや自然の美しさを体感できる充実したレースになったようです。
因みに14名の選手のうち、制限時間7時間30分の間に無事に完走(完漕)したのは8名。優勝した五十嵐選手でさえ5時間以上こぎ続けていたと言いますから、レースの激しさが容易にイメージできます。
表彰式では多くの選手が「もうからだが動かなくなって……」と語っていましたが、その表情は、みんな明るく充実したもの。過酷なレースを経て、川への想いもより深まっていったようです。
ゴールの戸田公園で「リバークリーン@荒川」と合流
さらに、同時開催イベントであるリバークリーン@荒川との連携もしっかりとっています。ゴール地点の戸田公園では、長瀞で回収したゴミを戸田で回収したゴミと並べて展示。上流と下流でのゴミの質の差などを知ってもらう場になりました。ULTRA A80とリバークリーン@荒川……ひとつの川を巡る2つのイベントを通じ、荒川という大河の魅力、上流と下流とのつながり、ゴミをはじめとする環境問題を、もっと身近に、もっとリアルに体感できる。そんな貴重な機会が生まれました。
主催者からのメッセージ
最後に、今回のULTRA A80を企画した実行委員長の藤村育三さんにお話をうかがいました。
藤村 荒川での初のロングディスタンスレースは当初の予定よりもだいぶ距離が短くなりましたが、レース展開もスピーディーになりました。リバー特有のホワイトウォーター(流れの早い瀬の部分)がコース上に少なかったため、リバーレースとしては少し物足りなかったかもしれませんが、何より行政と組んでの最初のレースであり、リバークリーンと同時開催したことで、人々の目が川に向いたことは、何よりの成果だったと感じています。
今後は、川沿いの地元の方々と協力しあい、グッズ、出店、表彰式、トロフィーなどをつくったりしながら荒川らしさを発信していきたいですね。そういった意味でも、今回はいいショーケースとなったのではないでしょうか。 経済、機会、コミュニティ……3つの要素を創出している海外のリバーレースを色々と見てきましたが、「将来、荒川でも実現可能だ」と感じた第一歩でした。